キャサリン・タカウ教授講演会[Professor Katherine H. Tachau Lecture]
ペトルス・アウレオリを当時の文脈のなかで読む
[Discovering Pierre Auriol, OFM (d.1322) in his Context]
- 【日時】2016年6月8日(水)午後18:30 ‐ 20:00
(講演自体は 45分~60分程度を予定しています)- 【会場】慶應義塾大学 三田キャンパス 南校舎472
- 【主催】慶應義塾大学大学院 文学研究科 英米文学専攻
- 【お問い合わせ先】赤江雄一(文学部)Email: y.akae[at]flet.keio.ac.jp([at] は @ に変更してください)
講演者 キャサリン・タカウ(Katherine H. Tachau)教授の紹介
タカウ教授は,ウィスコンシン大学マディソン校で博士号の学位を取得後,コペンハーゲン大学の研究員などを経て,現在はアイオワ大学歴史学部の教授であり,西欧中世盛期のインテレクチュアル・ヒストリーを広く対象とされています。
最初の著作である『オッカムの時代における視覚と確実性:1250年から1345年にかけての光学,認識論,そして意味論の基礎』Vision and Certitude in the Age of Ockham: Optics, Epistemology, and the Foundations of Semantics, 1250-1345 (1988) は,彼女の名前を一躍有名にしただけでなく,中世思想理解に大きな変更をもたらしました。それまで,14世紀のパリ・オックスフォード両大学においてオッカムのウィリアム(William of Ockham)が重要な役割を果たしていたと考えられていましたが,この著作によってタカウ教授は,現実的にはオッカムが与えた影響は小さく,代わりにペトルス・アウレオリ(Pierre Auriol)の著作が広く参照されていたことを,哲学者・神学者たちの未公刊の史料を渉猟することで実証的に論じたのです。書名からも伺えるように,この著作には科学史と哲学史の両方にかかわる幅広い知見が含まれています。
タカウ教授はさらに,思想家の哲学的思想的著作にのみ注目するのではなく,美術史の領域で近年注目を集めている『ビーブル・モラリゼ』(道徳的解釈が施された図解聖書)写本に焦点をあてて,13世紀のパリ大学の形成期における托鉢修道士と王権と大学のかかわりについての単著も準備されているなど,まさに幅広い「視野」Vision をお持ちです。
講演会の概要
今回の講演では,ペトルス・アウレオリについて,ご自身がかかわっておられるアウレオリのテクストの校訂作業にかんする話題に触れて頂きつつ,教授の近年の研究成果をお話しいただきます。
今回の講演では,今年3月末に西洋中世学会とバロック・スコラ哲学研究会が共催した岩熊幸男・関沢和泉両氏による写本読解セミナーとの繋がりが意識されています
テクストにかかわる具体的作業から,タカウ教授独自のインテレクチュアル・ヒストリーのヴィジョンがどのようにたちあがるのか,ご研究の現場の一部を開示してくださる貴重な機会になるはずです。講演は英語で行なわれますが,必要に応じて通訳等も交える予定です。
今回の講演会は,慶應義塾大学文学部の学部生・院生を対象としていますが,それ以外の方々のご参加も大いに歓迎します。せっかくの機会ですので,奮ってご参加いただければ幸いです。