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『中世思想研究』第42号和文要旨

第42号和文要旨 2000年(平成12年)9月25日発行、定価3,500円)

第42号目次

論文

今道 友信,超越と命題 –ニコラウス・クザーヌスの場合

今 義博,エリウゲナにおけるテオファニアの思想

加藤 和哉,未完の学としての神学 –トマス・アクィナスにおける「聖なる教え」

研究論文

上村 直樹,神讃美への促しと魂の完成の端緒 –アウグスティヌス『自由意志論』における「意志」をめぐって

 古代の「意志」概念形成に根本的な寄与をはたしたアウグスティヌスにおいて、その初期の意志論はストア派の主知主義的な枠組みのもとに理解されてきた。幸福な生への道程は、魂の権能である意志を自由に行使しつつ、徳をそなえた知者になるという魂の自律性によって保証されたからである。本論文では、初期著作『自由意志論』第2巻後半における神讃美を反復するテクストに着目し、初期の意志論がストア派から離脱、変容する契機を明らかにする。その讃美への促しを分析することによって、讃美の妥当性が、霊的な被造物が存在への欲求を内在するという観点から、魂がその完成への期待を未来へ投企するという観点へ転位したことが見出される。ストア派が過去と未来の事象を非存在であると考えるのに対して、こうした理解は魂の全体性を未来において確保する。アウグスティヌス初期の意志論は、魂が自己を全体として攫み、神との対話をめざす登高の道を開鑿する。

中軽米 明子,『サン=ベルナール書簡集』の構成から見た«vita contemplativa»と«vita activa»

江口 克彦,アルベルトゥス・マグヌスにおける神認識の媒介の意義

三谷 鳩子,トマスにおけるImago Dei概念の発展 –記憶論を中心に

佐々木 亘,人間的行為と自然法 –トマス・アクィナスにおける自己原因性の完成について

関沢 和泉,学としてのGRAMMATICA –ダキアのボエティウスによる様態論のプログラム

須沢 かおり,エディット・シュタインの神秘思想 –十字架のヨハネ解釈をめぐって

シンポジウム

論題 中世哲学と現代 –国家と正義

岩田 靖夫,(提題) 現代の政治哲学における主要な論点と問題点

稲垣 良典,(提題) 中世政治思想から何を学ぶか

清水 哲郎,(提題) 理性的独立的人間像から共に生きる人間像へ

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